産業廃棄物収集運搬業許可は、なぜ都道府県ごとに必要なのか?
2026年10月23日 09:44
産業廃棄物収集運搬業の許可を取得する際、疑問に思うことがあります。
それは、「なぜ一つの都道府県で許可を取得しても、全国で営業できないのか」ということです。
例えば、鳥取県で産業廃棄物収集運搬業の許可を取得した事業者が、島根県で産業廃棄物を積み込み、鳥取県の処理施設まで運搬する場合、原則として島根県の許可も必要になります。
同じ廃棄物処理法に基づく許可なのに、なぜ全国共通ではないのでしょうか。
今回は、この疑問について考えてみたいと思います。
1.廃棄物処理法第14条の規定
産業廃棄物収集運搬業の許可については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条第1項に規定されています。
同項では、産業廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、その業務を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならないとされています。
そして、運搬のみを業として行う場合には、その区域が「産業廃棄物の積卸しを行う区域」に限定されています。
つまり、許可の必要性を判断する上で重要なのは、単にどの都道府県を走行するかではなく、どこで産業廃棄物を積み込み、どこで荷卸しをするかということです。
2.通過するだけの都道府県では許可は必要ない
例えば、鳥取県で産業廃棄物を積み込み、岡山県の処理施設へ運搬する場合を考えてみます。
この場合、原則として鳥取県と岡山県の許可が必要です。
一方、運搬の途中で兵庫県を通過したとしても、兵庫県内で積込みや荷卸しをしないのであれば、通過するという理由だけで兵庫県の許可を取得する必要はありません。
このように、廃棄物処理法は、収集運搬業の許可が必要となる区域を積込み・荷卸しの場所によって判断する仕組みを採用しています。
3.なぜ全国共通の許可制度ではないのか?
ここで、最初の疑問に戻ります。
なぜ国が一括して許可を出す仕組みではなく、都道府県知事による許可制度になっているのでしょうか。
産業廃棄物の処理は、生活環境の保全と密接に関係しています。
廃棄物の不適正な処理や不法投棄が行われれば、その影響は地域の生活環境に及ぶことになります。
廃棄物処理法の制定当初から、産業廃棄物処理業については、適正な処理を確保するために行政による許可制度が設けられてきました。
そのため、地域の廃棄物行政を担う都道府県知事等が、事業者の許可や監督に関与する仕組みには、生活環境の保全という観点から一定の合理性があると考えられます。
もっとも、これは制度の趣旨から考えられる説明であり、都道府県ごとの許可制度が採用された理由のすべてを説明するものではありません。
4.都道府県ごとの許可制度は合理的なのか?
一方で、事業者の立場から考えると、複数の都道府県で許可を取得することには負担もあります。
例えば、鳥取県、島根県、岡山県の3県で産業廃棄物の積込みや荷卸しを行う場合、原則として、それぞれの県で許可を取得する必要があります。
申請手数料や添付書類の準備、更新手続などを考えると、事業者にとって決して小さな負担ではありません。
また、同じ法律に基づく許可であっても、申請書類の様式や提出方法、審査上の運用などが自治体によって異なる場合があります。
行政による適正な監督を確保しながら、事業者の手続負担をどこまで軽減できるのか。
これは、許認可制度を考える上で重要な問題だと思います。
5.許可制度は実際に合理化されてきた
実は、産業廃棄物収集運搬業の許可制度については、過去に合理化が行われています。
平成23年4月1日から、積替え・保管を伴わない収集運搬業について、都道府県知事の許可で、その都道府県内の政令市の区域を含めて収集運搬業を行うことができる仕組みとなりました。
それ以前は、同じ都道府県内であっても、政令市の許可が別途必要になる場合がありました。
この制度改正は、事業者の手続負担を軽減する方向で許可制度が見直された例といえます。
なお、積替え・保管を伴う場合などには、別途、政令市の許可が必要となることがあります。
6.まとめ
産業廃棄物収集運搬業の許可が都道府県ごとに必要となるのは、廃棄物処理法が、業務を行う区域を管轄する都道府県知事等による許可制度を採用しているためです。
そして、運搬のみを行う場合には、原則として産業廃棄物の積込み場所と荷卸し場所を基準に、必要な許可を判断することになります。
許可制度には生活環境の保全という重要な目的がありますが、一方で、事業者の負担との調整も必要です。
許認可を考える際には、単に法律に何が書かれているかだけでなく、なぜその制度が存在するのかという視点も大切ではないでしょうか。
当事務所では、鳥取県・島根県・岡山県を中心に、産業廃棄物に関する許認可手続をサポートしております。
産業廃棄物収集運搬業の新規許可や更新許可、事業区域の拡大などについて、お困りの際はお気軽にご相談ください。